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長く感じられたゴールデンウィークの最終日。
好天に恵まれ、多くの人々が明日からの労働復帰を前にして、一方で名残惜しそうに、あるいは慌しかった休日疲れにそろそろ飽きる中、NHKマイルCが行われた。

私はと言えば、連休を楽しむ世間とは無縁で、R299やR140のあまりの混み様に、結局は街に出ることも、遠出をすることもならず、気分的にずっと外出することが躊躇われ、結局は本を読んだり、細々とした雑事をこなしたり、ウィスキーをあおって早くに眠ってしまったりして、時間を埋めていた。

それでも土日になれば、G1戦がある。ダービーを控えたこの季節は、競馬真っ盛りのシーズンなのだ。だから私は、週末にはむっくりと起き上がって、燃え滾る男に変身するのである。

春・天皇賞は、カレンミロティックの激走の余波でモノにはできなかったが、同じ日の東京スィートピーSの1点的中もあって大負けはしなかった。以前そうだったように、どのレースも無理に勝ち馬を探し出すようなことをせず、何となく神様の啓示を受けて閃きを感じたレースだけに絞って、近未来の結果への予言的推理を実行する。それなりの経験値があれば、これに集中して徹するだけで、結果は大きく違ってくるものなのだ。少なくとも負け数が減少するのは間違いない。25%の控除率からすれば、数学的には買えば買うほど胴元を利することになるのだから。

エッ?閃こうにも知識がない?そういうお方には、「自ら励んで知識を積み上げなさい」と言うしかない。何事も最初の段階から楽をしては結果は出ません。楽して稼げる天下りの役人たちの存在が、どうも庶民に間違った近道のアプローチを教えているようだが、それはそもそも異常なことなのである。

ともあれ、出馬表に眼を通して、私は、この3歳マイル戦のNHK杯をじっと考えた。
昨夏のデビュー以来、マイル戦辺りのの重賞で、「凄い!!」と、私を唸らせてくれたのは、どの馬たちだったろうか?と。

NHK杯の出走メンバーを眺めながら、ここしばらくの時系列を遡ってみる。
2つのレースが浮かんだ。ロードクエストが上がり32秒8の脚で大外から差し切った夏の新潟2歳S1600m。もうひとつは、2月東京のクィーンC。牝馬メジャーエンブレムがこの時期としては驚異的な1分32秒5のタイムで逃げ切ったレースだった。桜花賞4着は、明らかにC.ルメールのミス騎乗としか言えない。そう言えば、去年の戸崎ルージュバックも、流れを見極めることなくスタート直後に抑えてしまったミス騎乗だったことまで想い出した。いや、今年のNHK杯には関係ないことだったが・・・。

では、どちらが勝つかは、どうしても断言できなかった。今回は、スピードに乗せて逃げようとするだろうメジャーエンブレム。豪快に追い込んでくるだろうロードクエスト。桜花賞の汚名をそそぎたいルメールと、最近とみに狙って大胆な追い込みを決められる騎手となった池添謙一。うーん・・どちらだろう・・・。

じゃあ、狙いたい穴馬はいるか?と気分転換。
ここ3走の成績からすると、あまりにも人気がなさそうな丸山元気ダンツプリウス。録画したGCで見た最終追切の気配も良かった。
もう1頭。岩田シュウジ。調教師須貝尚介のコメントを見ると、「騎手が秘策があると言っていた」とあった。秘策が何なのかは少しも判らなかったが、最終追切に乗った岩田康誠にそう言わせるほど、馬の気配や状態が手綱から伝わってきたのは間違いない。
今年になってマイル戦しか走っていない福永レインボーラインも気にはなったが、大外枠を嫌って狙い馬にはしなかった。

で、結局は、メジャーエンブレムとロードクエストを厚めの大本線(1点勝負にしたかったが・・止めておいた)、ほんの少しだけ私の選んだ穴馬2頭からメジャーエンブレムとロードクエストへ抑えてみた。全て馬連だ。
そもそも枠連の時代から競馬に関心を持った私は、余程その気がなければ3連単には手を出さない。1・2着馬は基本的にレースに絡んで走る馬であるが、3着馬は、レースを捨てて最後に運あれば漁夫の利を狙うハイエナのような馬でも確保できるのだ。着狙いはふてぶてしい賞金稼ぎの場合が多いものだ。

競馬は、勝利を競ってこその価値と信じている身からすれば、着狙いの馬よりも、たとえ潔く散ってしまう結果となったとしても、勝利に向けてひた走った馬に美しさを感じるのである。だから3連単は基本的に買えないし、Win5は、レースを絞りたい私には難度が高過ぎることになる。

実は、土曜の東京10R準オープンの緑風S2400m。何となく気が向いて(これが閃いたということだろう)、田辺サムソンズプライドから、ボウマン・アルターと蛯名トルークマクトへ馬連2点を、運試しにとオッズも知らずにほんの少しだけ買ってみたら、1着サムソンズプライド、2着トルークマクトで決まって、50倍を超える配当となった。それが幸運にもNHK杯の軍資金となったので、私の心は、負けて元々という気分で、日曜日を迎えていた。レースは絞って、新潟大賞典(これはレースをきちんと見ておくために藤岡佑介フルーキーから田中勝春ヒストリカルへの1点のみ)と、メインのG1NHKマイルCだけだった。数を打っても当たらないのが競馬だし、保険のないのも競馬だということは教訓として理解しているのである。

そしてNHKマイルCを迎えた。

スタート直後の200mと、直線最後の200mで、勝負は決まった。

最初の200m。好スタートを決めたルメール・メジャーエンブレムが先頭を確保してレースの支配権を掌握。やはり持ち前の適性を活かして逃げの手に出た。となれば、他馬は潜在能力の高さを畏れて、無茶に競りかけるようなことはできない。自滅が待っているからだ。

そのままレースは平穏に流れていく。

4コーナー。後方3番手にいた池添謙一ロードクエストが大外から追撃態勢に入った。

ホームストレッチ最後の残り200m地点。
秘策で挑んだ岩田康誠シュウジがインから叩き出される。が、ここまでだった。そこに他馬が殺到する。集団から抜け出したのは、大外枠の不利を克服した福永祐一レインボーライン。しかしその前には、ペースを緩めずに逃げるルメール・メジャーエンブレムがいた。その走りには、まだいささかも乱れはなかった。そして大外から池添謙一ロードクエストが、これがオレの競馬だとばかりに上り33秒台の脚勢で追い上げてきた。

ゴール地点。
1分32秒8の決着タイムでメジャーエンブレムは逃げ切った。3/4馬身差の2着にロードクエストが迫った地点がゴールだった。クビ差でレインボーラインが続いた。

ゴールイン直後にC.ルメールは、メジャーエンブレムの首筋を右手で軽く叩いてメジャーエンブレムを称えた。それから軽く拳を握り締めて、自らを納得させるように振った。そのアクションは桜花賞の屈辱のミス騎乗を克服した気迫に満ちていた。

ホッとしたのだろう。それからのルメールには、あの目尻を下げてほほ笑む表情が戻っていた。

2着ロードクエスト。騎手池添謙一には、今シーズン桜花賞、天皇賞に続いて3度目の2着だった。しかし、その大胆不敵な差し勝負には、まぎれもなく騎手池添謙一の魂が刻まれていたのは間違いない。狙いすまして追い込みを決める頼れる騎手に、もはや池添謙一は変貌しているのだ。

4着にダンツプリウス。丸山元気の成長も確かに見て取れる結果だった。

さて週末は、同じ東京のマイルG1・ヴィクトリアマイル。
JC馬ショウナンパンドラ、ミッキークイン、ルージュバックらが揃う。
あれあれ、ひょっとしたら、またも池添謙一とルメールが戸崎圭太を交えながら雌雄を決することになるのか?
これは、騎手の存在理由を賭けた見逃せない大勝負となるはずだ。うーん・・・ならば私も、再度挑戦あるのみだ。


☆よくよく今日の出馬登録を確かめてみると、ミッキークィーンには宙に舞った落馬負傷から復帰する浜中駿、ルージュバックにルメールの騎乗で、戸崎圭太は昨年の覇者ストレートガールに騎乗だった。ケンタッキーダービー(9着)から帰国した武豊はスマートレイアーに騎乗する。さてさてどうなることやら・・・。



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