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桜花賞馬ジュエラーが骨折、メジャーエンブレムがNHKマイルCのマイラー路線に転じ、池添謙一シンハライトは、その実績からしてもほぼ1強の状況下でオークスを迎えたのは間違いない。

コディーノの妹馬チェッキーノがトライアル・フローラSを差し切って、直前に人気が上がっていたが、2400mに挑む藤沢和雄厩舎ということ、加えて血統的にも2000mまでの中距離というイメージが、私には付きまとい、どうしてもシンハライトを差し切るイメージは持ち得なかった。

それなら人気を考えると、もっと新興勢力となる横山典弘ジェラシーや、四位洋文ペプチドサプルや、ここのところ以前の激しさが鳴りを潜めた印象のある岩田康誠のアドマイヤリード、昨秋にメジャーエンブレムを差し切った川田将雅のデンコウアンジュらの方が面白いのかなと考えながら、そのときを迎えた。

私にとっては、このオークスは、実はシンハライトがどんなレースをするかという関心だけが最大の関心事だったのである。

スタートして、桜花賞よりやや後ろの中団後方のインに待機したシンハライト。ペースは前半5Fが59秒8のやや速いペースで流れたが、この位置では、自分のペースを守ったということだろう。

もし池添謙一に少しだけの誤算があったとしたら、4コーナーを廻ってホームストレッチを迎えたとき、力量差を意識すれば、もう少し楽に抜け出せると考えていたことではなかろうか。

直線を迎えて、インにいたシンハライトは、なかなか自らの抜け出す進路を確保できなかった。前を言った馬たちもなかなかばらけずに粘っていたからである。クラシックレースのG1戦ならそれも当然と言えば当然である。

右左とチャンスを伺い続けた池添謙一が、ようやく見つけた一瞬開いた道は、坂を上り切った辺りだったろうか。しかし外から並んで来ようとした川田将雅デンコウアンジュにとっても、その一瞬開いた道は譲れぬものだった。

外からシンハライトを締めようとするデンコウアンジュ。一瞬早く最終便となる進路を確保しようとインからデンコウアンジュを弾き飛ばそうとするシンハライト。両馬は互いにぶつかり合いながら同じ進路を目指した。

結局弾き飛ばしたのは、余力を持って勢いのあるシンハライトだった。ぶつかり合って怯んだデンコウアンジュの馬上で、川田将雅は手綱を引いて立ち上がる状況に見舞われた。ここでシンハライトが負けなかったことで、オークスは本来のオークスに戻ったのだとも言えるだろう。

そこからゴールまでのおよそ僅か150mで、様相は大きく変わった。シンハライトのいっきの差し脚が炸裂し、女王の座へと駆け上がって行った。

他馬との力の違いは明らかだった。

もしジュエラーが無事で2400mをもOKなら、おそらくこの両馬は、オークスでも3度目のゴール前の決戦を展開してくれただろう。その意味では、秋の秋華賞は、メジャーエンブレムと3頭揃い踏みの決戦が展開されるのかも知れない。もう待ちどうしくてならないというのが、オークスを見終えての率直な感想となった。

決着タイムは2分25秒0。昨年のミッキークィーンと同タイムである。

直線坂上のせめぎ合いの事象を理由として、騎手池添謙一には、ダービー週の2日間の騎乗停止処分が科せられたが、8年前のトールポピーのときとは違い、今回は最終最後の勝負処で一瞬の勝負に出た結果であり、私には、競馬が馬上の格闘技である以上、あそこで闘わないことの方が嘆かわしいのだと言わざるを得ない印象である。

とにもかくにも、勝つべき名牝が、力通りに勝ち抜いたオークスと、私の脳裏に刻まれていく結果だった。

週末は、日本ダービーである。すでに狙い馬は3頭に絞っているのだが、その結末や如何にである。
やはり勝つのは、あの馬だ!!と、確信している。

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