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3年前の冬のまどろみ

     寒くて、寒くて、炬燵で丸まっていると、ふとまどろんでしまう事がありますよね。
           
     こんな私も、うとうとと睡魔に襲われ、まどろみの中で妄想の夢を見てしまったのです・・・。

      
    


    ☆       ☆      ☆

                                               <2013 1月 了>
さてさて、お立会い。

世の中に、巻菱湖の駒は数あれど、ここに並ぶは、そん所そこらにある菱湖チャンとは、ちょっと違う。

さて、お立会い。

暇とお足に余裕があるなら、さあさ、手にとって御覧なさいな。

手で触って、もみもみすれば、その差は歴然。お宅のカアチャンとは、格段の違いだよ、この菱湖ちゃんは。

それも3種3人だ。盛り上げ、彫埋め、彫駒と、そろいも揃った美人コンテスト。

これを逃しちゃ、男じゃないよ。

エッ、何遠慮してんのさ。ここは、御触りバーじゃないんだ。触ってみても、お足は要らねえ。安心して触ってよ。あっ、でもそこのあんたはダメ。指先が汚ねえじゃんか。ションベンした後、ちゃんと手を洗ったのかい?石鹸で手を洗って出直して来な。そいつは、ジェントルマンの嗜みじゃあねえのかい。

ほら、そこのあんた、涎を流しちゃいけねえよ。ハンカチ持ってるなら、まずは拭きなよ、爺ちゃんよぉ。

ほらほら、お立会い。知ってるかい?知らない?じゃあ、教えてやるけどな、将棋の駒にゃあ、漆で盛上げた盛上げ駒、漆で埋めた彫埋め駒、スパッと彫った彫駒と、3つの種類があるんだよ。
値段?あってないようなもんさ。皆が欲しがる良い物は、目ん玉が引っくり返り、ちん玉が縮み上がるほど高くなる。こりゃあ、資本主義の習いよ。でも誰も欲しがらなけりゃあ、二束の三文さあね。

世の中のいい女も、皆が手を出さなけりゃあ、バーゲンセールよ。

でもな、ここにあるのは、皆が欲しがる高級品。垂涎の的ってもんよ。

ほら、触って御覧よ。カチンカチンと、いい音が響くだろう。木なのによう。木は木でも黄楊の木だ。かの御蔵の島のよぉ。これは、仕上げがいいっていう証拠なの。ほら、指すとカチン、カチンと響くだろうが、いい音がよう。あんたも男なら解るだろ?カチンカチンが大事なのはよう。フニャけちゃったら、終わりだろ?

盛上げ、彫埋め、彫は、かの有名な先生方が作られた。誰って?そりゃあ言わぬが華というもんだ。想像してよ、推理しなさいよ。それも楽しみじゃないのかい。

その名作が、巡り巡って、今はオイラのところに来たって訳さ。

さあ、持って行くかい?納得値段で。いやあ、嘘だよ。嘘。この駒だけは、オレが死んでも手放さないよ。お宝物だから。

だから、今日のところは駒は見せるだけ。

それでも見たいかい。しょうがねえなあ。あんたも好きねえ。ちょっとだけだよ、ちょっとだけよ~ん。

DSCN0819.jpg

エッ!?彫がない!!そこら辺にあったのだがな。まあ、いいじゃねえかい。今度ってことで。細けえこと言うんじゃないよ、そこのお兄さん。

でも、ほら、いいだろう。欲しくなるだろう?でも、やらないよ。どんなに札束を積まれても、世の中にゃ、身売りできねえ物があるんだい。オイラの操のようによお。体は売っても、心は売らないなんてね。キスしちゃやあよ、お前さん。

100年後には芸術だよ、芸術。
とは言え、オイラも霞を食ってばかりじゃ生きてはいけない。エヘヘ・・何なら、お安くしとくからよう・・・。

こいつはどうだい。見たことないだろ?エッ、どんなもんだい。なんちゃってね。


ryouko 3種 
裏だけじゃ、皆さん納得できませんか?では、ほんの少しだけ。

ryouko 3種 ②

ちょっとだけよーん、あんたも好きねえ・・・・。

          ☆      ☆     ☆


3年前の真冬の日曜日の昼下がり。掘り炬燵の中で、ついウトウトとして。気がつくと、啖呵売(タンカバイ)の真似事をしていました。

私は、まどろみの中で、たぶん夢を見ていたのでしょう・・・。

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