出来上がった作品のチェック作業に入ると、どうも他のことが後回しになってしまう。特に「書き下ろし」で新境地に挑んだ場合には、これでいいと安心できる根拠がまだ希薄なので、どうも心が落ち着かずにざわめいてしまうのだ。締め切りがあってないようなときが、最も辛い。こんなときには、傍で誰かが「いいね」と一言囁いてくれると寒い心も温まるのだが、世間は優しくない場合が多い・・・。
で、先週の土曜。贔屓のムーア・アルバートが中山ステイヤーズSを、池添謙一ヤマカツエースが中京金鯱賞を勝ち、日曜を迎えた。
師走のダート日本一決定戦チャンピオンズC。以前のJCダートの名残のレースだ。
有馬記念の後、暮れの大井で東京大賞典があるので、祭りで言えば宵宮の感じが拭い去れない。JC時代の方が、何となくイメージが鮮烈だった。
中京のダート1800m。ともすれば直線だけの攻防で決着するイメージがある。ある程度のペースで行った先行馬が、坂のある長いホームストレッチでゴール前で疲労度を増して脚を鈍らせた瞬間に、4コーナーを廻って残り400m地点からレースに絡み始めた追い込み馬が迫って、ゴール直前の50mで決着するパターンが多い。
先行馬がそのまま粘れば、強い先行馬となり、追い込み馬が差し切れば、鮮やかな追い込み馬として称賛されるのだ。どっちに出るかの2者択一と言える。
今年もそうだった。直線でダート戦6連勝馬・武豊アウォーディーが抜け出したが、ゴール前で脚を鈍らせ、残り400mの追い込み馬大野拓弥サウンドトゥルーに差し切られたのである。
3着の人気薄和田竜二アスカノロマンも先行して足を鈍らせた形で、4着津村明秀カフジテイクは最後方からの残り400m組だった。
このレースは両極端の勝負馬が結果に絡んでくるのが面白い。
結局、3人の世界レヴェルの騎手たちが乗った人気馬たちは全滅。すると大野拓弥、和田竜二、津村明秀のようないぶし銀の騎手たちが浮上する。私見だが、これらの騎手たちは時流に乗った騎手の裏側で腐らず奮闘しているし、彼らの精進こそが、実は競馬を最高に面白くする力となるのだ。何事も表だけでは成り立たない。表と裏が複雑に入り組み合ってこその世界なのだから。
とかく勝負事は、眼光紙背に徹し、表と裏を確かに見分けなければと、初稿の原稿に目を通しながら改めて確かめた次第である。
でも、こと自分のことになると、表と裏を見分けるのがかえって難しいのはどういうことなんだろうかと、今朝は思っている・・・。
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