(ライティング:4月10日)
2016年の牝馬クラシック第1弾桜花賞は、咲き誇る桜の中で行われた。
戦前からの下馬評では、2歳牝馬チャンプであるメジャーエンブレムが2月東京のクイーンCで圧勝したこと、そしてトライアル・チューリップ賞でシンハライトとジュエラーが他馬を突き放してハナ差の好レースを繰り広げたこともあり、3強の戦いと言われてきた。
確かに、その通りの気配で3頭はパドックにその姿を現したのだが・・・。
私には、ルメールの騎乗に?を抱かざるを得なかったのである。
いつもは攻撃的なルメールなのに、この桜花賞に関しては、ちょっと守りに入った騎乗ではなかったのかと。
おそらく4着に敗れた最大の敗因は、一瞬遅れたスタート直後に、何とか好位に上がって行きながらも、外から迫って来た馬たちを先に行かせてしまったことだろう。先行して圧勝したクイーンCを思い出せば、優れたスピードの絶対値があるメジャーエンブレムだ。そのままスッと3番手ほどのポジションを占めてしまったなら、他馬はレースの支配権を認め強さへの警戒心を露わにしてて、メジャーエンブレムの一挙手一投足の動きに合わせなければならないプレッシャーを持ったはずである。しかし控えてしまったために、外から馬群に包まれて逆に自由のない閉塞状況に陥ってしまったのである。
それでも4コーナーを廻って、何とか馬群を抜け出そうとしたが、外にいた戸崎圭太ラべンダーヴァレイに締め付けられて、何度か馬体をぶつけ合い、余分なストレスを受けざるを得なかった。結果的には、ここでメジャーエンブレムの桜花賞は終わっていた。
ラベンダーヴァレイも勝ち馬から0秒2差のチューリップ賞3着馬である。自ら勝利を目指すためには、インに締めて譲らぬ姿勢を持っている。例え弾き飛ばされたとしても、この直線の勝負場所で甘さを見せることはない。
強気の攻撃で好位2・3番手を占めたなら、直線では楽に自らの進路を確保して、また違う桜花賞となったはずなのに、何故かルメールはインに控えた策に出てしまったのである。メジャーエンブレムの最高の姿は、ルメールの騎乗によって、桜花賞では引き出されることはなかった。
先に馬群を抜けたのは、池添謙一シンハライトだった。池添謙一は、桜花賞に対応するためにこの日は中団のポジションを確保して、そこから抜け出したのである。
そのときM.デムーロ・ジュエラーは、いつもの後方策をとって、外から弾けようとしていた。
直線坂を上がった瞬間には、シンハライトが勝つかと思わせたが、しかしそこからゴールまでのジュエラーの差し脚は凄かった。
2頭は、チューリップ賞とは内と外を入れ替えて、この日の桜花賞では底力を競い合った。
ゴールの瞬間、同着でも不思議はない攻防が繰り広げられていたのである。
写真判定の結果、勝者はジュエラーだった。またもデムーロと、その瞬間には多くのファンがそう思っただろう。
レース後に、ふと気づいた。ジュエラーは社台ファームの生産馬だ。社台ファームの代表吉田照哉は、やはり感性の人であるのだろうと。去年はG1戦でノーザンファームには勝てなかったが、ここしばらくの社台ファームのG1活躍馬を想い出せば、エイシンフラッシュやロゴタイプにサウンズオブアース・・。そして桜花賞は、ヴィクトワールピサ産駒のジュエラーである。感性を駆使して作り上げた馬たちが、もうすでに社台ファームの個性となっているのではないだろうか?
引き換え、ノーザンファームは、ドゥラメンテに代表されるように、繁栄する牝馬のファミリーを、科学とビジネスライクな手法でさらに鍛え上げていく個性が顕著になっている。
吉田善哉という偉大な存在から出自を同じにしているのだが、すでにそれぞれのイズムが浸透して個性となっているのではないか?
そう思えば、日本を代表する2大巨頭のこれからの動きは、さらに面白く注目できるのではないか?
目先の1勝のために、互いに互いを後追いするようになったなら、世界制覇の前に、たぶん共倒れとなるのかも知れない。何故なら、個性と個性の競争は、もはや表現レヴェルで雌雄を決する段階に至っているのだろうから。
今週末は皐月賞である。そんな視点でレースを眺めると、そこにまた新しい競馬が見えてくるのではないだろうか?
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