これから本格的に始まるG1戦を前にして、やはり古馬戦線の重要なトライアルとなるのは、毎日王冠(東京・芝1800m)と京都大賞典(京都・芝2400m)だ。そしてこのレースを見終えると、秋G1の活況が始まっていく。
今年は、7日からの3日連続開催で、8日に毎日王冠、9日に京都大賞典が組まれた。世の中連休中で、頭の体操の退屈しのぎにもなったが、意外だったのは昼間の気温で、出走馬の多くは汗をタラタラと流していた。10月初旬の30度近い温度もきついものだ。すでに扇風機はしまっていたので、夕方まではエアコンをつけっ放しにするほどだった。
ここ数日で、今の日本社会の中枢には、信義も節度も闘う高貴さすらも決定的に欠如していることがはっきりして、それも大方の世論の反映した世相と情けなくなってしまっている身には、せめて一筋の気概を示した立憲民主には健闘して欲しいと願うばかりだ。
リベラルという言葉は、今世間で使われているような「左派のイデオロギー言語」では決してなく、本来、人間や人権・自由を尊重する精神を指すのだが、敢えて意図的な政治言語として壟断されてしまっている。実はジャーナリズムが最も尊ぶべき言葉こそ、不偏不党のリベラル精神であると、私は理解している。リベラルの同義語はサヨクでもマルキシズムでもない。対極にあるのは、国家主義、国権主義である。国の生存がなければ個人の生存もないと高々という輩がいるが、私に言わせれば、個人の生存なくしてそもそも国家機構など存在しえないのである・・・。
とか何とか、義憤を覚えながら、そのストレスも一瞬忘れて、8日の午後、まずは毎日王冠を迎えた。
GCの最終追い切りを見て、私の選んだのは、リアルスティール、グレーターロンドン、そして大穴なら力は足りないかも知れないが気配の良さが目立っていたウィンブライト。取り合えずその馬たちにオークス馬ソウルスターリングから流してみようか。
パドックを見終えて、どうも私の心はソワソワと落ち着かなかった。妙な騒めきが収まらなかったのである。すでにパソコンから決めていた馬券は購入してしまっていたが、それでも落ち着かなかった。
外国人ジョッキーから川田将雅の手綱に戻らなかったマカヒキは、もし好走するとしても次だろうと思っていた。その川田は仏凱旋門賞に乗せた陣営のサトノアラジンに騎乗する。
そのときふと閃いた。もし3歳牝馬ソウルスターリングが、古馬のプレッシャーをまともに受けて沈んだとしたら・・?それもあり得ることだ。
ソウルスターリングが沈んだら、そこで浮上するのは、G1実績のある古馬の精鋭か、G1での好走歴のある上昇馬だろう。そう考えて、急いでまた出馬表を眺めた。私の眼に、デムーロ・リアルスティール、田辺グレーターロンドンと川田サトノアラジンが浮かび上がった。
最終最後に、この馬連3点を追加すると、私の心の騒めきも少し晴れてくるようだったのが不思議だった。
ゲートが開いて、前半のポジション取りの攻防があった。結局先頭に立って逃げたのは、ルメール・ソウルスターリング。しかし前半の5Fは60秒の落ち着いたスローペースだった。
おそらくソウルスターリングが負けたのは、直線インのポジションで、外からまともに他馬からのプレッシャーを受けたからだろう。特に、2番手からの北村宏ダイワキャグニーの好走が、おおいに影響したとも言える。やはりソウルスターリングは、インに包まれるよりも外から馬群を抜け出した方がいいタイプなのではないだろうか。
差してきた上位3頭のゴール前の攻防には、見応えがあった。古豪リアルスティールも、良馬場のサトノアラジンも、まだ伸びる可能性を秘めたグレーターロンドンも、その個性は充分に発揮されたと言える。
レース結果が発表されてみると、最終便に間に合うかのように購入した馬連3点が、実は上位3頭そのままで、何とかまだ私自身に悪運が尽きていないことを確かめることにもなった
が、本音を言うととても疲れた競馬観戦だったのは間違いない。午後の3時間ほど、私の頭はこの毎日王冠のために結局はフル活動をしていたのだから。まあ、競馬修業は競馬苦行の道だからしょうがない・・・。
しかし、この疲労感は競馬開催3日めとなる9日の京都大賞典に悲劇的に影響したのだった。
GCの最終追い切りの気配から、私はスマートレイアー、ミッキーロケット、トーセンバジルと大穴にマキシムドパリを選んでいた。軸にするのは、横山典が騎乗する史上最強の2勝馬サウンズオブアースとはっきりと決めていた。シュヴァルグランには、坂路の気配がまだ自ら走り抜こうとしているようには個人的な印象では持ち得なかったので外すことに決めた。勿論、来られたら実績馬なので諦める覚悟はできていた。
平均より速いペースで流れて、2400m最後の直線を34秒の脚で上がってくる馬が勝つだろう。それは、横山典サウンズオブアースで、追いすがるのは、武豊スマートレイアー、和田竜ミッキーロケット、岩田トーセンバジルで、もしマーメイドSのように藤岡佑マキシムドパリが4コーナー先頭のような形で粘っていたら大穴だ!
パドックを見終えても、今日の私は頭がボケッとしていて、粘りもなく、イージーにレースを決めてかかってしまっていた。すでに疑うエネルギーを節約してしまっていたのだ。(はっきり言って、アホでした)
先行を期待したマキシムドパリは直線半ばで早々と消えて、3着シュヴァルグランも、着外に敗れたサウンズオブアースも、4コーナー手前地点辺りからの手応えそのものが、最高潮の姿ではなかった。
その間隙を縫って、伸び切ったのは武豊スマートレイアー。直線のイン攻撃を賭けた岩田トーセンバジルが2着。和田竜ミッキーロケットは4着だった。
レースが決着した瞬間、私は、
「アッ、やられた!!何と・・・」
と、画面に向かって叫んでいた。叫びながら、ヘナヘナと脱力していた。同時に、今の自分自身の競馬という勝負に挑む体力の無さを呪うかのように痛感させられていた。
最終追い切りを見て選んだ馬たちの好走には胸を張れたが、労力節約とばかりに結果を決めてかかてしまっていた愚かさを恥じてもいた。つい昨日の毎日王冠の体験は何だったのか?・・・。そうだ。バカは死んでもバカなのだろう。アハハ・・・。寂しげな眼元に笑っていない笑いが浮かんだ・・・。
それにしてもだ。同じ日に、東京で行われたGC(グリーンチャンネル)カップ。ダート1400m。大きく出遅れた内田サンライズノヴァが、いっきにまくり上げて勝ったのだが、こんな強引な競馬で古馬たちを問題にしなかった。まだ3歳馬なのだ。とすれば、アクシデントなく来年のフェブラリーSを迎えたなら、信頼できる本命馬となるだろう。憶えておくべき馬である。
結局は疲労困憊で過ごした3日間。毎日王冠のプラスは、少しおまけをつけて京都大賞典でJRA貯金をして、さらに疲労を増した。
おい、ひょっとしたら信義も節度も、闘う気力もないのは、自分自身じゃないか?と、胸に迫る言葉が私を責め立てもした。
この夜は、スプリンターズSで手にしたウィスキーを最後の1滴まで飲み干して、早めにベッドに入ったのだった・・・。
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