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スプリンターズSと凱旋門賞~期待と現実


期待と結果は、とかく裏腹な現実を招き寄せるものだと、思い知らされた10月2日だった。

朝からの元気が、まず午後3時40分過ぎに最初に砕け、11時過ぎにダメ押しされたのである。多くの競馬ファンたちが、そんな思いに哀しく沈んだことだろう。そう感じられてならない。

スプリンターズS。中山1200mの短距離馬の晴れ舞台。主役は、春高松宮記念の覇者ビッグアーサーだった。春に1分6秒7の好タイムでミッキーアイルを差し切ってG1馬となり、秋初戦となったセントウルSでは強気な逃げで他馬を押し切ったビッグアーサーだ。注目が集まって当然の現況だったのである。
それなのに・・ああ、それなのに・・・。

私自身は、GCで最終追切を見て、素晴らしい気配に感じた上昇馬レッドファルクス、追切はいまいちだったが実力馬ミッキーアイル、それに2歳の小倉記念以来何となく呼びやすい名前が気に入って応援しているシュウジの3頭を相手に選んで、さてビッグアーサーがどんなレースで勝ち抜くのかと、安心しながらパドックを迎えた。

ビッグアーサーのちょっと気負ったような鞍下の泡立つ汗が気になったが、それでも大丈夫だろうと疑わなかった。

でも大丈夫じゃなっかたのである。

結果からすると、本当は馬の当日の過ぎた気負いが原因だったように思えるが、この日の騎手福永祐一の騎乗法にも馬の気負いを何とかなだめてやる冴えがなかった。それでも馬群を突き抜けて勝てると踏んだのか、好位5番手の馬群の中で4コーナーを回り、直線で外に出そうとしたときには、すでに勝ったM.デムーロ・レッドファルクスに並ばれていて出せず、しょうがなくインに向かったが前が詰まって、挙句の果ては前の馬に触れて躓いて体勢を崩し、勝負にならないまま12着に沈んだのである。

まあ、何をやっても冴えない日もあるのだろう。前後左右どちらに向かっても災難に見舞われてしまうような日が。福永祐一にとっては、残念ながら10月2日はそんな日だったのだろう。

個人的には、今年からスプリンターズS勝ち馬が招待されるブリーダーズCで、サクラバクシンオー産駒のビッグアーサーがどんな走りを見せてくれるか、大いに興味を持っていたが、それもかなわなかった。まあ、それが現実なのだが、勝ったレッドファルクスも、考えてみればサンデーサイレンス牝馬×スウェプトオーヴァーボードという血統で短距離馬特有の切れ味を誇る馬に成長しているから、招待を受けるならこの馬も捨てたものではないなと考え直した次第。

レース後に改めて出走馬表を見て、今夜凱旋門賞に挑むマカヒキの3歳上の全姉ウリウリが、この電撃の6F戦に出走しているのを再確認して、何となく嫌な感じを抱かざるを得なかった。血の本質は、それが個性的なものであればあるほど、余程の突然変異がなければ変えることができないのではと、ふと心配してしまった。同世代同士で競った日本の2400m戦と、古馬精鋭が揃う仏凱旋門賞2400mはまるで違うレースとなるのではないかと。それも11時過ぎには解るだろう。

フレンチデピュティ牝馬×ディープインパクト=マカヒキは、残念ながら凱旋門賞の勝負には絡めなかった。14着敗退。

馬が気負っていたこともあるだろう。外々を回らされた展開もあるだろう。勝った前走ニエル賞のタイムは2400m2分35秒8だったが、凱旋門賞はレコードが刻まれた2400m2分23秒6。
例年のロンシャンから今年は少しは軽い馬場のシャンティイ競馬場だったにしても、直線のせめぎ合いは、厳しく究極の底力を試されるものだった。
マカヒキは同じ距離の同じ場所で、まったく別のレースをさせられることになって、カルチャーショックに見舞われてしまったのかも知れなかった。しかし何事にも動ずることない対応力こそが、強さと言えるのも、これまた真実である。

勝者は、R.ムーア騎乗の4歳牝馬ファウンド。マカヒキを含めた3歳勢は惨敗を喫した。ガリレオ産駒の1~3着独占。アイルランドの調教師エイダン・オブライエンの管理馬の同じく1~3着独占。あのポストポンドも敗れ去って、世界の力量と広さを改めて思い知らされることになった。世界のムーアやデットーリの華やいだ色気ある騎乗もやはり圧巻だった。

レース後の印象は、「エルコンドルパサーやディープインパクトやオルフェーブルは本当に偉大な馬たちだったんだな・・・」それしか頭の中に浮かばなかった。

今年初めて、JRAが日本だけのプール方式で電話投票を通して馬券を発売したが、その売り上げは41億だったという。驚くべき数字だった。おそらく爆買いするようなファンは少数だろうから、日本の競馬ファンの裾野は、今それだけ世界への関心をも高めているということだろう。「競馬の尊さ面白さを楽しめないような奴は、最先端のアヴァンギャルドとは言えない」と語られるような時代が、もはや訪れているのかも知れない。小泉・竹中に始まった格差の鬱屈さの中で、馬に託してせめてもの自己解放しうる粋な「悪所」が成立しているとしたら、それは一つの文化論にまで昇華できることになるのだが・・・さてさて・・・。




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