明けて10月13日。
台風一過の朝で、青空も戻ってはきたが、台風19号の巻き起こした水害被害の状況は、山では大雨による土砂崩れ、平地では河川の氾濫という形で次第に明らかになってきた。ほんの小さな沢が轟音を立てる濁流に変わって流れ続けていたのを直視していたので、自然を制圧管理したかのような人為的治山治水は、大自然の威圧威力の前には空しいまでに無力であると、平伏すような思いに駆られた。
しかし今日京都では、2歳牝馬最後のクラシックレース秋華賞が、それでも開催される。とにかく家の周囲だけは見回して、大雨に耐えているかを確認して、机の前に戻った。何がどうなっているのか不明なので、念のため車での外出は控えた。
(後で知ったのは、普段使う道では、林道のわきの崖が1か所水に流されて崩れ通行禁止となった。幸いにもそこは町に降りるときに通過する場所ではなかったので、最悪の事態とはならなかった。昔から住む人たちからは、あそこは山が動いている場所だと聞いたことがある。そこに道を通しているのだから、山が歪んだ場所なのだろう。他にも周囲の山の道では多くの場所で崩れたところがあると知った。いずれにせよ先人の記憶による知識は尊いものだ)
午後、刻々と伝えられる大規模な水害被害のTV画面に、100年に一度や1000年に一度の大災害は、私を含めた人間は「それはきっと起こるかも知れない。でも自分が生きている間にはたぶん起こらないに違いない」と、傲慢な楽観にすがって暮らしているのだろうなと思うと、少しばかり心が寒くなって、机の前に戻った。
外出を控えたので、ネット競馬新聞を購入。1Rが60円である。ダウンロードして印刷。京都・秋華賞と特別戦の出馬表は揃った。
9R。秋華賞と同じ2000mの2歳戦の紫菊賞。エピファネイア産駒松山ロールオブサンダーが2:03.4で勝った。前半5Fは63秒2。馬場は稍重まで回復していた。
となれば、3歳牝馬のG1戦なら、今日の馬場で1分59秒後半の闘いになるだろう。そう判断したのだが・・・。
秋華賞のゲートが開いて、1コーナー過ぎまでの攻防。福永ビーチサンバがこの日の秋華賞の様相を決めた。戦前におそらく逃げるだろうと目されていたルメール・コントラチェックに先頭を譲らず、自らレースを支配するペースを創ったのである。こんな意地を主張する福永祐一の騎乗を私はずっと見てみたいと思っていたので、少しばかり嬉しかった。
ルメールは交わすに交わせず2番手の外。川田ダノンファンタジーは好位のイン3番手。中団の前に北村友一クロノジェネシス、その直後に津村明秀カレンブーケドール。
しかし、しかしである。ペースは上り、前半5Fが58秒3。9Rの紫菊賞とはまるで異なる流れとなった。
結局、後半5Fは61秒6。もし前半と後半の流れが逆だったら、レース結果は、まるで違ったものとなっていただろう。それでも福永ビーチサンバは5着を確保したのだから、福永祐一は確信犯で意地を賭けた1発勝負に挑んだと言える。
4コーナーを廻って、川田ダノンファンタジーは外に出て一応の勝負態勢を作ったが、そこからは伸びず8着に惨敗した。慣れない先行ペースのレースの流れに翻弄されてしまった印象である。
ダノンファンタジーからカレンブーケドールとクロノジェネシス、調教気配の良かったサトノダムゼルに流して、的中すると決めていた私も、レースの流れに翻弄されてしまうことになった。それにしても、ここしばらくのM.デムーロの精彩の無さが少し気になるのだが・・・さて・・・。
翌14日もまた競馬。世の洪水被害状況は深刻さを増していたが、山にほぼ閉じ込められた身ではどうすることもできない。
で、またネット競馬新聞で府中牝馬Sを購入して、岩田誠スカーレットカラーから石橋ラッキーライラック、戸崎クロコスミア、川田オールフォーラブに流してみた。予想通り岩田スカーレットカラーは鋭く差してはきたが、石橋ラッキーライラックが3着ではどうしようもない。また左の背中がズキズキと悲鳴を強めもした。
早く地面が乾けと思っている間にすぐに週末を迎え、19日の富士Sからはコンビニで競馬新聞を買えたが、久し振りに短期免許で日本に来たスミヨン・レイエンダを無視して哀しい土曜を過ごし、それではと気持ちを入れ替えて菊花賞に挑んだ。
しかし50歳7か月の武豊ワールドプレミアを、トライアル神戸新聞杯でヴェロックスとは勝負付けが済んだと軽視して惨敗。私は、川田ヴェロックスから最終追い切りの気配で選んだ福永サトノルークス、スミヨンの騎乗するヒシゲッコウ、酒井学のレッドジェニアル、そしてこれだけは心情馬券と340Kgの牝馬メロディレーンを応援していたから、2,3着馬券は持っていたと強がっても完敗は完敗だった。
暗い週末。白血球の数値が下がったとはいえ身体の異常も治らずまだふらつく状態で、よくよく冷静に考えてみると、体調異変に始まって、大雨に見舞われ慌ただしさの中で、秋華賞の日から連敗を続けていた。悔しさよりもアッという間に過ぎる時の流れに押し寄せられて「アレッ、そうだったの・・なんかなぁ・・・」と、戸惑うだけだった。でも、ひと眠りすれば、やがて明日は来ると、ふて寝を決めた。
朝、起きたときには今日も競馬があることは忘れていた。3日間開催は疲労度が増してダメージが大きいのだ。
熱いストレートコーヒーを飲みながらゆっくりと覚醒する。そう言えば、今日も東京競馬があるんじゃないかと想い出す。
調べてみるとオクトーバーS(オープン芝2000m)が組まれていた。今週末は秋・天皇賞の優駿ラウンジシート招待だ。競馬場に行く。ならばここで何とかする必要がある。ふと私の心の中に、少しは見栄を気にする気力が生まれた。で、ネット競馬新聞で調教欄のある出馬表を購入した。
印刷したページを見る。ひと目で、これはスミヨン・トリコロールブルーと内田ダイワキャグニーのレースだと直感した。馬連で18倍のオッズだった。
後は、念のためにプレスジャーニーかマイネルサーバスかラストドラフトの中から1頭選んでみようか。でもラストドラフトはルメールの騎乗で、その人気が現状開催日5連敗の私には相応しくない・・・。
となれば・・・。
その後は、あれこれと考えることなくレースの時刻を待った。昼頃、景気づけにタウリン3000のドリンクを飲んで何とか元気を出そうと工夫した。
スタートして、逃げる石橋サラキア。2,3番手はインにスミヨン・トリコロールブルー、外に内田ダイワキャグニー。流れは、前半5F(1000m)が61秒6のやや遅いペース。このペースなら先行有利の直線の差し比べだ。
その通りになった。外からプレスされたトリコロールブルーは、直線で進路を確保するまで不利があったが、最後に粘るサラキアを交わし切って2着を確保した。1着はスミヨンをインに封じて自らを有利にした内田ダイワキャグニー。石橋サラキアは僅差の3着で、後続の馬たちは手も脚も出せぬ典型的な前残りの差し比べのレースとなったのである。
おおーッ‼神様、仏様、内田様スミヨン様‼この瞬間、私は開催日5連敗から脱出していた。わずかに閃いたこの1勝で、すぐれぬ体調も、大雨の怖さも、秋華賞・菊花賞の敗退も、開催日5連敗の屈辱も、全てから解放された気分となった。
正直に言えば、現実の体調は、まだまだな感じであるのだが、少なくとも首から上の頭の部分ではハイな昂揚感で満ち溢れたということだ。
本当に、何が何だか判らぬうちに、私にとって変な10月が過ぎて行った。
何やってるんだ、お前は・・・。と、責められても、そんな浮世を過ごすのが、何の因果かこの世に生まれた私自身の運命の役割なのだと開き直るしかない。それも良しだ。
ともあれ、今週末の秋・天皇賞に、私は幸いにも胸を張って行ける状況が生まれた。来る秋・天皇賞は、出走メンバーからすると日本競馬最高峰のトップオブザサラブレッド決定戦となる。
今から気分はワクワクしている。願わくば、変な10月がそうであったように、突然の体調不良に見舞われることがないように。こればかりは、今の私には祈るしかないのだが・・・・。
台風一過の朝で、青空も戻ってはきたが、台風19号の巻き起こした水害被害の状況は、山では大雨による土砂崩れ、平地では河川の氾濫という形で次第に明らかになってきた。ほんの小さな沢が轟音を立てる濁流に変わって流れ続けていたのを直視していたので、自然を制圧管理したかのような人為的治山治水は、大自然の威圧威力の前には空しいまでに無力であると、平伏すような思いに駆られた。
しかし今日京都では、2歳牝馬最後のクラシックレース秋華賞が、それでも開催される。とにかく家の周囲だけは見回して、大雨に耐えているかを確認して、机の前に戻った。何がどうなっているのか不明なので、念のため車での外出は控えた。
(後で知ったのは、普段使う道では、林道のわきの崖が1か所水に流されて崩れ通行禁止となった。幸いにもそこは町に降りるときに通過する場所ではなかったので、最悪の事態とはならなかった。昔から住む人たちからは、あそこは山が動いている場所だと聞いたことがある。そこに道を通しているのだから、山が歪んだ場所なのだろう。他にも周囲の山の道では多くの場所で崩れたところがあると知った。いずれにせよ先人の記憶による知識は尊いものだ)
午後、刻々と伝えられる大規模な水害被害のTV画面に、100年に一度や1000年に一度の大災害は、私を含めた人間は「それはきっと起こるかも知れない。でも自分が生きている間にはたぶん起こらないに違いない」と、傲慢な楽観にすがって暮らしているのだろうなと思うと、少しばかり心が寒くなって、机の前に戻った。
外出を控えたので、ネット競馬新聞を購入。1Rが60円である。ダウンロードして印刷。京都・秋華賞と特別戦の出馬表は揃った。
9R。秋華賞と同じ2000mの2歳戦の紫菊賞。エピファネイア産駒松山ロールオブサンダーが2:03.4で勝った。前半5Fは63秒2。馬場は稍重まで回復していた。
となれば、3歳牝馬のG1戦なら、今日の馬場で1分59秒後半の闘いになるだろう。そう判断したのだが・・・。
秋華賞のゲートが開いて、1コーナー過ぎまでの攻防。福永ビーチサンバがこの日の秋華賞の様相を決めた。戦前におそらく逃げるだろうと目されていたルメール・コントラチェックに先頭を譲らず、自らレースを支配するペースを創ったのである。こんな意地を主張する福永祐一の騎乗を私はずっと見てみたいと思っていたので、少しばかり嬉しかった。
ルメールは交わすに交わせず2番手の外。川田ダノンファンタジーは好位のイン3番手。中団の前に北村友一クロノジェネシス、その直後に津村明秀カレンブーケドール。
しかし、しかしである。ペースは上り、前半5Fが58秒3。9Rの紫菊賞とはまるで異なる流れとなった。
結局、後半5Fは61秒6。もし前半と後半の流れが逆だったら、レース結果は、まるで違ったものとなっていただろう。それでも福永ビーチサンバは5着を確保したのだから、福永祐一は確信犯で意地を賭けた1発勝負に挑んだと言える。
4コーナーを廻って、川田ダノンファンタジーは外に出て一応の勝負態勢を作ったが、そこからは伸びず8着に惨敗した。慣れない先行ペースのレースの流れに翻弄されてしまった印象である。
ダノンファンタジーからカレンブーケドールとクロノジェネシス、調教気配の良かったサトノダムゼルに流して、的中すると決めていた私も、レースの流れに翻弄されてしまうことになった。それにしても、ここしばらくのM.デムーロの精彩の無さが少し気になるのだが・・・さて・・・。
翌14日もまた競馬。世の洪水被害状況は深刻さを増していたが、山にほぼ閉じ込められた身ではどうすることもできない。
で、またネット競馬新聞で府中牝馬Sを購入して、岩田誠スカーレットカラーから石橋ラッキーライラック、戸崎クロコスミア、川田オールフォーラブに流してみた。予想通り岩田スカーレットカラーは鋭く差してはきたが、石橋ラッキーライラックが3着ではどうしようもない。また左の背中がズキズキと悲鳴を強めもした。
早く地面が乾けと思っている間にすぐに週末を迎え、19日の富士Sからはコンビニで競馬新聞を買えたが、久し振りに短期免許で日本に来たスミヨン・レイエンダを無視して哀しい土曜を過ごし、それではと気持ちを入れ替えて菊花賞に挑んだ。
しかし50歳7か月の武豊ワールドプレミアを、トライアル神戸新聞杯でヴェロックスとは勝負付けが済んだと軽視して惨敗。私は、川田ヴェロックスから最終追い切りの気配で選んだ福永サトノルークス、スミヨンの騎乗するヒシゲッコウ、酒井学のレッドジェニアル、そしてこれだけは心情馬券と340Kgの牝馬メロディレーンを応援していたから、2,3着馬券は持っていたと強がっても完敗は完敗だった。
暗い週末。白血球の数値が下がったとはいえ身体の異常も治らずまだふらつく状態で、よくよく冷静に考えてみると、体調異変に始まって、大雨に見舞われ慌ただしさの中で、秋華賞の日から連敗を続けていた。悔しさよりもアッという間に過ぎる時の流れに押し寄せられて「アレッ、そうだったの・・なんかなぁ・・・」と、戸惑うだけだった。でも、ひと眠りすれば、やがて明日は来ると、ふて寝を決めた。
朝、起きたときには今日も競馬があることは忘れていた。3日間開催は疲労度が増してダメージが大きいのだ。
熱いストレートコーヒーを飲みながらゆっくりと覚醒する。そう言えば、今日も東京競馬があるんじゃないかと想い出す。
調べてみるとオクトーバーS(オープン芝2000m)が組まれていた。今週末は秋・天皇賞の優駿ラウンジシート招待だ。競馬場に行く。ならばここで何とかする必要がある。ふと私の心の中に、少しは見栄を気にする気力が生まれた。で、ネット競馬新聞で調教欄のある出馬表を購入した。
印刷したページを見る。ひと目で、これはスミヨン・トリコロールブルーと内田ダイワキャグニーのレースだと直感した。馬連で18倍のオッズだった。
後は、念のためにプレスジャーニーかマイネルサーバスかラストドラフトの中から1頭選んでみようか。でもラストドラフトはルメールの騎乗で、その人気が現状開催日5連敗の私には相応しくない・・・。
となれば・・・。
その後は、あれこれと考えることなくレースの時刻を待った。昼頃、景気づけにタウリン3000のドリンクを飲んで何とか元気を出そうと工夫した。
スタートして、逃げる石橋サラキア。2,3番手はインにスミヨン・トリコロールブルー、外に内田ダイワキャグニー。流れは、前半5F(1000m)が61秒6のやや遅いペース。このペースなら先行有利の直線の差し比べだ。
その通りになった。外からプレスされたトリコロールブルーは、直線で進路を確保するまで不利があったが、最後に粘るサラキアを交わし切って2着を確保した。1着はスミヨンをインに封じて自らを有利にした内田ダイワキャグニー。石橋サラキアは僅差の3着で、後続の馬たちは手も脚も出せぬ典型的な前残りの差し比べのレースとなったのである。
おおーッ‼神様、仏様、内田様スミヨン様‼この瞬間、私は開催日5連敗から脱出していた。わずかに閃いたこの1勝で、すぐれぬ体調も、大雨の怖さも、秋華賞・菊花賞の敗退も、開催日5連敗の屈辱も、全てから解放された気分となった。
正直に言えば、現実の体調は、まだまだな感じであるのだが、少なくとも首から上の頭の部分ではハイな昂揚感で満ち溢れたということだ。
本当に、何が何だか判らぬうちに、私にとって変な10月が過ぎて行った。
何やってるんだ、お前は・・・。と、責められても、そんな浮世を過ごすのが、何の因果かこの世に生まれた私自身の運命の役割なのだと開き直るしかない。それも良しだ。
ともあれ、今週末の秋・天皇賞に、私は幸いにも胸を張って行ける状況が生まれた。来る秋・天皇賞は、出走メンバーからすると日本競馬最高峰のトップオブザサラブレッド決定戦となる。
今から気分はワクワクしている。願わくば、変な10月がそうであったように、突然の体調不良に見舞われることがないように。こればかりは、今の私には祈るしかないのだが・・・・。
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