11月27日JC。 少し遅れて12時半近くになって「優駿」招待ルームに到着。 部屋に着く前に、ちょっと一服と喫煙所の扉を開けると、何と春以来の再会となる大内9段が座っていた。 とはいえ、私にとっては、名人戦速報や囲碁将棋チャンネルで、タイトル戦の立会人の様子や囲碁の棋力向上委員会に登場した姿を見ていたのでご無沙汰していたとは思えなかった。 しばらくこの場所でおしゃべりタイム。駒のこと、孫弟子のことなどいろんな話題が出て、私は自らが体験したり見聞きしたことを、心おきなく話題にした。「人間の本質なんて判らないものですね」などと。 最近関心事となっている将棋界のよもやまのことについては、大内9段はこう教えてくれた。「仲間が仲間を売るような関係式になっていますよね。こんなことは良くはないんです。同じ将棋の道を歩む者同士は、互いに競争者であり仲間でもあるんですから。弟子から明日の棋士会に出席して下さいと誘われていますから、明日は行こうと思ってますよ」 昼の松花堂弁当を食べながら、私は今日のJCを思い描いていた。 「今日ここに来たのは、ホームストレッチでの底力を問われる攻防を見たいがためだ。1枠1番を利しておそらくキタサンブラックが逃げる。今日のメンバーならある程度弛まないペースとなって、直線はゴールドアクター、リアルスティール、最強の2勝馬サウンズオブアースらが波状攻撃を仕掛けてくるに違いない。耐えきったらキタサンブラックは名馬の尊称を改めて不動のものにするし、あるいは差し馬たちの連続攻撃の前に負けるとしたら今日なのかも知れない。でもそんな厳しいレースが見たいものだ」と。 しかし、そんな大きく期待したドラマは、実は何も生まれなかったのである。 スタートしてやはり先頭に立つ武豊キタサンブラック。そのペースは前半5F61秒7。2番手に田辺ワンアンドオンリーが楽に追走できるぐらいだから、1着賞金3億円のJCとは思えない流れとなってしまった。 逃げ馬を有利とするか不利とするかは、競馬においては2番手の馬の動き次第だ。ピタッと逃げ馬をマークして圧力をかけたなら、逃げ馬自身が自分のペースを失って不利となる。しかしワンアンドオンリーが2番手の競馬では、キタサンブラックは7分か8分の力で自在に逃げられた。武豊のゴーグルの奥でほくそ笑む顔すらが、もはや第1コーナーで浮かんだ。 案の定、